10.あとがき


  岡山県真庭市北部地域(旧湯原町・中和村・八束村・川上村)は、昭和2年に“オオサンショウウオ生息地”として国(文化庁)により天然記念物の指定を受けている。
  しかし、昭和40年代以降耕地整備と河川改修が進み、現在の河川環境は昔に比べて大きく変化している。そこで、現在の河川がどのような状態であるかを実態調査してみることとした。
  河川には防災・治水・農業目的などの河川構造物があるが、これがオオサンショウウオや魚の移動可能な構造であるか否か、護岸や堤防と河床の状態が水中生物に優しいか否かを私の個人的主観によって区分した。また、川沿いから見た山地の植生を杉・桧の植林地と自然林、両者の混交林などに区分した。
  平成16年10月の台風23号により植林地は大きな倒木被害を受けた。更にこの倒木地は平成18年7月の強雨で斜面崩壊を多発し、地域の交通と生活に多大な障害を与えた。調査ではそのときの崩壊箇所を調べて平面図に示している。
  河川調査では道から魚などの水中生物の有無を観察し俗名を記しているが、当人は魚類・虫などは全くの素人であることをお断りしておく。また、魚の生息環境評価とオオサンショウウオの生息についても個人の感覚的な判断であることを容赦願いたい。
  これらの調査は個人の独断と偏見によって行ったものであり、素人が単に川と山を見て写真を撮り、個人の感じたことを記録した雑記帳程度のものとして見ていただきたい。
  今回、JR落合駅から上流の旭川水系の河川と植生を調査した結果、強く感じたことを挙げると以下のようである。
   1).河川・水路はコンクリート、ブロック積み、堰堤等で囲まれ、湿地や瀞・淵・瀬などの自然の流れはほとんど無い。このため川の浄化能力は低く、水中生物は棲み難い環境である。また、降雨時には鉄砲水や突発出水を生じ易い。
   2).植林は間伐が不十分で下地は草木の無い裸地となっている。このため、植林地の谷は砂泥が流出し、藻やコケ類も無いため昔のような泉や清水が無い。また、虫や蝶、魚や小鳥・動物も少なく、自然の乏しい山である。
   3).植林地は樹齢20〜50年となるが、間伐の不十分な地域は山地の荒廃が進行している。今後、台風や強雨によって斜面崩壊や土石流、洪水などの自然災害が多発するものと予想される。
  真庭市は自然と緑豊かな杜の市といわれるが、植林地の手入れ不足によって自然の乏しい、自然災害の発生し易い市になろうとしている。河川改修によって水系の昔ながらの自然は失われたが、更に広大な植林地で現在山地の荒廃が進行中である。後世に立派な森林と豊かな自然を残すために、植林地の間伐に知恵を出すべきであろう。
  この調査がCDにまとめられて世に出る事となったのは、NPO法人エコ・ギアの中原清士顧問の強い熱意と、濡木輝一顧問、小笠原照也代表理事・福田富男会員の多大な努力、および多くの会員の指導と協力によるものである。ここに深く感謝いたします。
  なお、本CDは2009年6月にNPO法人エコ・ギアで発表したものに若干の加筆を行い、一部編集をやり直したものである。その編集作業は全面的に高野聖之氏にお願いした。ここに厚く感謝いたします。
                  2012年3月 高野信男(NPO法人:エコ・ギア会員 技術士:応用理学)


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