6.あとがき
今回の調査は、津山ICから中国自動車道沿いに兵庫県境までの区間の北側エリアで、東は兵庫県境、北は鳥取県境に囲まれた岡山県北東部地域である。
本地域は西から東に広戸川、滝川、梶並川、吉野川と4本の吉井川支川が並び、それぞれ北の中国山脈から南に向かって流下している。
北の県境は標高700〜1,300mの中国山脈が連なり、その南西側に平野と丘陵地からなる標高100〜250mを有する津山盆地が広がる。西側の広戸川および滝川はこの津山盆地を主流域とし、その東側の梶並川および吉野川は標高250m以上の小起伏山地〜中国山地を開析して流れている。その土地利用と植生を大局的に見ると、平野は水田と集落・宅地、丘陵地は畑または混交林、小起伏山地は混交林、標高500m程度以高の中国山地は植林主体である。
今回調査した4支流の概要は以下のとおりである。
1).広戸川水系
・ 源流は広戸仙であるが、主として平地と丘陵地の広がる津山盆地の中を流れており、平地には水田と集落が開けている。
・ 川は護岸工で整備されて三面張り区間と河川構造物が多く、農業用水路と化している。
・ 川は水深の浅い平らな瀬の流れで、魚の住処は無くモツゴが住む程度で、大山椒魚はおらず、自然の乏しい川である。
・ 広戸仙一帯は植林地、その裾から下は水田と丘陵地が広がる。
・ 丘陵地は植林の風倒木被害が甚大で、その跡地は放置されて雑木が生育しており、残った植林と交じり合って、混交林となりつつある。
2).滝川水系
・ 源流域に当る自衛隊演習場(日本原高原)は自然林を主体とし、自然の残った地域であり、谷川も自然状態に保たれている。
・ 自衛隊演習場より下流域は丘陵地で一部に平地も開け、植生は混交林主体である。
・ 自衛隊演習場より下流の滝川およびその支川は、いずれもよく整備された川で、護岸工と魚の遡上困難な落差工が連続しており、水深の浅い流れで魚の住処は無く、魚の姿は見えず大山椒魚もいない。
・ 滝川本川の下流域は落差工により水の流れは浅いが、川幅が広く一部区間には自然の流れも残っているので、昔からの魚が少々は住んでいよう。
3).梶並川水系
・ 上流域は中国山地で植林主体、中・下流域は小起伏山地で混交林主体である。
・ 川は中国山地と小起伏山地を解析して流れるため、広い平野は無く、細長い川沿い平地と渓谷からなり、集落も小さなものが主体である。
・ このため集落や農地からの下水や排水は少なく、河川の水は清流である。
・ 川は昭和50年代より前の古い石積護岸や、護岸の無い自然の流れのところが多く、魚の住処の多い河川環境にある。
・ 昔からの魚の生息している川と、一部の魚が消えた川とがあるが、全般的にはよく自然を残した水系であるといえる。
・ 久賀ダムから上流と、砂防ダムの多数築造された支川では、一部の魚が姿を消し魚の数も減ったとのことである。
・ 魚の数は全般に減少しているが、大山椒魚は増加しているとのことである。
4).吉野川水系
・ 旧東西両粟倉村地域は植林地が多いが、旧大原町から下流域は混交林が広がり自然林も所々に残る。
・ 吉野川本流沿いには狭長な川沿い平地が有り、水田と集落が連続するが、それ以外の水系には目立った平地は無く、渓谷がほとんどである。
・ 吉野川の江見地区は、平成21年8月の集中豪雨に伴う河川復旧工事で川床掘削しているため、川に魚はほとんど居ない。
・ 本流は清流で自然の流れに近く、魚の住処は多く昔からの魚がいるが、川鵜と鷺が魚を食べてしまい、魚の生息数はごく少ないとのことである。
・ 支流は清流であるが護岸が整備され、魚の遡上困難な落差工や砂防ダムが多数入っている。このため、洪水で魚が流されると魚がなかなか帰ってこないとのことである。魚の住み難い川で魚の姿の見えない川が多い。
・ 大山椒魚はほとんどの川に生息しており、増加する傾向にあるとのことである。
津山盆地を主流域とする広戸川と滝川は、河川整備によって魚の住処は無く、魚のあまり見られない川となっている。一方、小起伏山地〜中国山地を流れる梶並川と吉野川の本流は、魚の住処の多い清流で昔ながらの魚と大山椒魚が住んでいるが、その支流は護岸工と河川構造物で固められ、魚の住処は少なくその移動も困難で、魚の姿はほとんど見られない。従って、本地域の河川もその多くは魚の住み難い環境となり、本流の一部に昔からの魚がわずかに住んでいる状況であるといえる。
筆者が子供の頃の、1950年代の川は石積護岸や井堰の隙間、および淵や瀞が魚の住処となり、多種類の魚が多数泳いでおり、それを追いかけて1日中遊んだものである。今は定規で描いた平行護岸と落差工が連続し、魚の住処は無く魚もいない。昔の豊かな川の姿と楽しみを知らない現代の子供たちはかわいそうである。一部にでも昔の自然の姿を取り戻せたらいいがと願うものである。
平成24年10月 NPO法人エコ・ギア会員 高野 信男
技術士:応用理学部門